「バーチャル旅行」はコロナ後も残る?

自称旅行好きが「行けないからその代わりに」以外の可能性を考察してみた

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はじめに

イギリス、クロアチア、エジプト、ギリシャ、モンゴル、中国……これは、コロナさえなければ筆者が行くはずだった旅行先リストです。
 コロナ禍になり、伸び続けていたところから一気に地へ落ちた海外旅行業界。観光目的での日本からの出入国は、全面禁止だったころと比べればわずかに回復はしているものの、未だに悪い状況が続いています。

そんな中、急速に存在感を増しているのが「バーチャル旅行」。動画配信サイトやビデオ通話サービスを活用して、旅行会社や通販サイトから個人での発信まで、さまざまなプランで「行った気になれる」海外旅行が広まっています。
 例えば、HISの「24時間ライブツアー」は、世界30か国以上で観光地や現地文化体験を、文字通り24時間かけて配信するというバーチャル旅行。好きな時に自由な出入りも可能で、料金は1500円です。これを安いと取るか高いと取るかは人によると思いますが、個人的には気軽に参加しやすい値段ではないかな? と思います。

さて、コロナ禍で勢いの増すバーチャル海外旅行は、果たしてコロナ後も残るのでしょうか?

結論から言ってしまうと、「残る」と考えている専門家は多いようです。また、筆者もそう考えます。
そこで今回は、「バーチャル海外旅行」のメリット/デメリットを洗い出し、どのような可能性を秘めたサービスなのかを考察していきます!

1.「コロナ禍で行けない代わりのバーチャル旅行」は実体験には勝てない

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大前提として、「今まで行きたいときに海外旅行をしていたが、コロナで行けない埋め合わせをバーチャル体験でしている」という客層に対して、アフターコロナに同じ文脈で宣伝をしても恐らくほぼ響かない……というのは、言わずもがなだと思います。いくつかのハードルを越えてしまえば、現地での実体験に勝るものはないからです。この「ハードルを乗り越えて旅行できる人」を、仮に「海外旅行アクティブユーザー」としましょう。

では「海外旅行アクティブユーザー」とは、どのような属性の人でしょうか? 
 筆者基準では、以下の5つの要素を満たしている人々です。

  • お金があること
  • 時間があること
  • 健康であること
  • 言語や文化の違いを楽しめること
  • 危機管理能力が備わっていること

この辺りの条件を満たしている旅行者は、いわば「海外旅行アクティブユーザー」の中で最強の存在です。彼らにとって海外旅行は当たり前の娯楽であり、海外旅行ができる状況下でわざわざバーチャル旅行を選択する理由はありません。
裏を返せば、これらのどれかひとつでも欠けていると、それがそのまま海外旅行に対するハードルとなり、海外旅行をしない動機に繋がります。

次は、それぞれの要素が欠けた場合に「バーチャル海外旅行」がどう補足できるのか? を考えていこうと思います。

2.バーチャル海外旅行の強みとは?

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先ほど、「○○だから海外旅行ができない」の文脈でお話ししましたが、そう考える人々をバーチャル海外旅行に参加したいと考える潜在顧客とするには、やや不十分です。
 正確には「○○だけど海外旅行がしたい!」と考えている人々が、潜在顧客に当たります。

それを踏まえて、先に上げた5つの「海外旅行を楽しむのに必要な基準」を反転させて、「海外旅行を楽しめないハードル」5つを作ってみました。

  • お金がない
  • 時間がない
  • 健康に問題がある
  • 言語や文化の違いが不安
  • 現地で危険な目に合うのが怖い

さて、これらのハードルは、バーチャル海外旅行で乗り越えられるでしょうか?
 バーチャル海外旅行の大きな強みは、

  • 移動しなくていいこと(家からも、日本からも)
  • 内容を十分に理解できるよう周到な準備がされていること
  • いつでも好きな時に手ごろな価格で参加できること

この3点が最も大きなところだと、筆者は考えます。
 どうでしょうか? この3つの強みは、先に上げた6つのハードルを、概ねカバーできているとは思いませんか?

本物の海外旅行と比較すれば、五感を通じて理解できる情報量の少なさや驚き・衝撃の得にくさはありますが、旅番組を観た時とは異なる「参加している」という特別感や、旅行の専門家や現地の人々ならではの着眼点による新しい発見が得られるのは、本物の旅行と同じです。
さまざまな事情で「海外旅行は難しいな」と考えている層や「行くのは面倒」と考えている層でも、未知の世界を紐解く充実した内容のバーチャル海外旅行があれば、オンラインで非日常を体験できるのです。

3.スタディツアーやオンライン占い、ライブコマースなどの販促展開も

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「そうは言っても、たかがバーチャルでしょ?」と思われるかもしれません。ぶっちゃけ筆者もそう思っていたのですが、実際に各旅行会社のツアープランを見てみると、どうもそんな単純なものではないようです。

例えば、JTBの「ディーン&デルーカハワイ オンラインショッピングツアー」。買い物は旅行の醍醐味のひとつですよね。このツアーでは、オンラインで現地限定の商品を紹介後、専用Webサイトで実際の購入が可能です。また、通販番組などとは異なり、その場で商品についての質問をすることもできます。
ショッピングツアー形式は、スタイルとしてはライブコマース(ライブ配信とEC販売を組み合わせた新しい販売形式)に近く、視聴者は現地店舗の雰囲気を味わいつつそこでしか買えない商品を入手できます。また店舗側も、人気店であれば混雑を避けながらスムーズな購入体験を提供でき、新興の店舗であれば店を知らない層へのアプローチが容易になります。

「オンラインツアーのテーマとしてもうひとつ人気なのが、「スタディツアー」形式です。これは文字通り「学習」を主題としており、歴史的な場所や美術・博物館、現地の文化などの解説を受け、新たな学びを得ることができます。
 例えばHISの「家族で考える『アンネの日記』ピーススタディツアー」は、ユダヤ人少女アンネ・フランクについて学ぶスタディツアーです。オランダ・アムステルダムにあるアンネゆかりの地をめぐりながら、彼女の生まれた時代や実際の生活についてを知ることができます。第2部ではツアーガイドと参加者による座談会が催されるなど、「発信と共有」が手軽にできるのもオンラインツアーならではです。

また、上記2つとは異なるユニークな体験ツアーもあります。HISの「インド オンライン占星術&手相占いツアー」は、インドの有名な占い師による占いを通訳付きで体験可能。現地に行って占いを受けるのは、個人的にちょっと勇気がいる行動だと思うのですが、オンラインだとハードルが下がるように思います。
その他にも、フランスやスイス、ドイツでのバーチャル海外旅行ツアーには、ワインの醸造所やチーズ加工場といった「工場見学」も散見されます。これらの中には、終了後に現地から実際の製品が送られてくるオプションがついているなど、1度の参加で2度おいしい工夫がされているのも特徴です。

こうして見ると、オンラインツアーには時間や場所の融通がききやすい分、ひとつひとつが面白くて充実したコンテンツになっていることが分かると思います。

おわりに

現在、日本への入国には非常に厳しい制限が課されています。インバウンド客はもちろん、やむを得ない事情で出国した日本人であっても、例外はありません。そんな中で、ご紹介した「バーチャル海外旅行」は、新しい娯楽として非常に面白いものだと思います。
 この「バーチャル海外旅行」がコロナ禍をチャンスに変えて大きく発展すれば、収束後もひとつの選択肢として残る可能性は十分にあります。
 また、日本人が海外旅行を楽しむのではなく、インバウンド客に向けたバーチャル海外旅行も、同じように需要があるだろうことは想像に難くありません。動画配信サービスや越境ECサイトを活用したインバウンド向けバーチャル海外旅行ツアーが、次の旅行への布石になることも十分考えられます。

コロナ禍で発展した「オンライン体験」の世界。コロナ後も需要が残るだろうことを考え、DXなどと結びつけて活用する方法を模索していきたいですね。

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筆者プロフィール

teatime

広報担当 無糖ティータイム

入社3年目がもう目前。現在はコラム「UP College」を中心にWebサイトのライティング、オフラインでの配布物作成などを行っている。趣味は旅行で、アジア圏ではタイ・ベトナム・台湾を訪問済み。コロナが収束した暁には、キャラバン隊へ参加してシルクロードを横断する予定。

最近の出来事:夜、暑くて窓を開けて寝ていたら、朝雨が寒くて危うく風邪をひくところでした。この時期の室温調整はむずかしいですね…。