UnivaPay

フリー

なぜamazon paymentsは凄い?旧ID決済サービスを振り返り考える

※本記事は2019年以前に書かれたものです。

“Paypalなどの既存ID決済と、amazon paymets(アマゾンペイメント)って、どう違うんですか?”

確かに!その違いに全く触れていませんでしたので、本エントリをもって回答とさせていただきます。

わりと前からあった、ID決済

頂いたご意見の通り、以前からID決済は存在しており、じわじわ利用もされていたような印象です。
ただし、急速にスマートフォンが普及したこともあって様々なボトルネックができてしまい、それらを解消できていないがために既存のID決済決済は「普及」というレベルに達していないのだと思います。
ここからは、それぞれのID決済サービスが公開(または日本上陸)した時系列順に普及のボトルネックを考察していきたいと思います。

1. Paypalの日本上陸

Paypalは2007年の3月頃、サービスの日本語化と日本円での決済に対応したようです。(正確なソースが見当たらなかったため断言しませんが)
当時すでに当社で営業マンをしていたので「とんでもない条件で殴り込んで来た!」と戦慄したものです。
この段階でアカウントの保持者数は、恐らく世界で最高だったでしょう。何しろ世界最大のオークション(CtoCの商取引仲介)サイトであるebayの公式決済ツールだった訳ですから!

しかし時間の経過とともに、思いのほか普及していな様子が確認できたばかりか、一旦導入した企業から乗り換えのご相談を何度もいただく事になりました。
何故なら、物販では配送先住所の入力が必須なところに、もう一度住所(なかなかのボリュームの日本語入力)が必要で、顧客との関係性が構築できてない業態では、コンバージョンに悪影響が出てしまうのです。その上で、累積で一定以上の金額の送金・払い出しをする際にメールとはいえ本人確認資料の送付が必要になった事も打撃であったのでしょう。適正化のために致し方ない変化ではあるのですが。
その結果、現在では
国内の物販ではほぼ使われず、個人事業主のセミナーなどが主な加盟店という印象です。(当社私調べ。当時それなりに足も使いました。笑)
これらから利用者のアカウント作成動機が弱く、加盟店の導入メリットが薄いという「越えがたいボトルネック」の存在が見えてきます。
しかしebayの日本法人は「今後越境ECに力を入れる」と発表しており、今後「アカウントの作成動機」としての活躍を期待しています。

2. Yahoo!と楽天

Yahoo!は「Yahoo!ウォレット」を外部サイト向けに2008年8月にリリースしています。楽天も同年10月に「楽天あんしん支払いサービス」をリリース。

いずれも当時、押しも押されぬ「日本最大のオークションサイト」「日本最大のオンラインショッピングモール」であったため利用者の動機はバッチリです。
自ら運営するショッピングモールでももちろん利用でき、既に多くの大手サイト・サービスに導入されています。
しかし、ここ数年で起きている「スマホ・シフト」でいくらかのユーザが振り落とさせていると推測します。何を隠そう、私がその一人なのですが(笑)
特にyahoo!はログインのためのPWが任意ではなく、桁数もなかなか長いので、ユーザー自身が暗記するのはいささか無理があるでしょう。
以前からのヘビーユーザーは今後も残る筈ですが、それほどでもない場合はスマホ・シフトで取りこぼさない事が課題でしょう。スマホはメールのプッシュ通知が出がちなのも離脱を招きそうです。
なお、楽天は2013年10月に「かんたん登録オプション」で住所入力の省略も可能とし、amazon paymentsでできる事は網羅しています。

3. LINE Pay

2014年12にリリース。ここで突然エコヒイキが始まるのですが、私はLINEという企業のちょっとしたファンです。

現在の中高生から20代前半を中心に、コミュニケーションのあり方を変化させていく力を持った数少ない企業である、と信じています。
以前、実際にLINE Payのアカウントを作りました。・・・が!モールでは別の決済代行会社しか使えず、住所連携できるショップが、まだないという状態でした(再確認したところ、執筆時点でも)。
利用可能なショップも物凄く若者向けという事もあり、アッサリ利用を諦めた訳ですが、まさに私のような「壮年以上の層」に動機を与える事がテーマになりそうです。子供が大きくなってスマホを持つようになれば、親子のコミュニケーションツールとなり、仕送りもLINE Payで・・・となり得るポテンシャルの高さは感じています。本来は携帯電話キャリアあたりがやったら面白いサービスだと思うんですけどね。
このように「利用者自身が活用方法や顧客層を広げくれる事」が強みです。大いに期待しながら、引き続き注視していきます!

4. その他

SPIKE(課題は概ねPaypalに似る認識です)、Facebookの「取引できるグループ」については、十分な情報がないため割愛させていただきますが、今後も引き続き注目していきたいツールです。但しいずれもCtoCが最適という印象で、どうやってBtoC領域にリーチするのか?が課題だと考えています。

その点アマゾンペイメントは?

察しの良い読者諸氏は既にお気づきかも知れませんが、実はここまでに出てきたボトルネックを、アマゾンペイメントは全て解消出来ているのです。
利用者の登録動機が十分で、物販加盟店に受け入れられやすい手数料で、スマホ・シフトにも難なく対応し、幅広い年齢層が既に登録済み
どうです?完璧に見えませんか?実は、ここに挙げたボトルネック以外にも、システム接続が容易か?個人情報は安全に提供されるか?という、詳細が明かされていないが故の不安要素もありますが、amazonの事ですから、良い解決策を既に見つけていそうなものです。
以上が頂いたご意見への回答です。

「amazonが競合」の意味

みなさんも、以下をご一読ください。

“iPhoneはすばらしい製品であり、ユーザーはジョブズが設定した値段を喜んで支払う。何も問題はないように見えるが、ベゾスに言わせればそれが失敗なのだ。つまりこの分野でiPhoneがそれだけの利益を上げられたのであれば、利益率を少々削れば価格優位な製品が作れると広く認識させてしまった。
<中略>
通常、価格競争はある分野で優位に立った企業に対して後発企業が仕掛けるのが通例だ。しかしアマゾンは、「先制価格戦争」あるは「予防的価格戦争」を仕掛ける。新事業のスタートの際に意識的に赤字覚悟の料金を設定する(ちなみに、その時点で競争相手は存在しないから被害を受ける相手もいないので反トラスト法が定める不正競争行為に該当しようがない)。”

引用元:日経ビジネスオンライン「タフな交渉で相手をたたきつぶすのがアマゾンの文化」

受け止め方はお任せしたいところですが「こういうところ」が正式に競合になったという事です。
住所とカード情報の入力、というネットショップの「面倒くさい手続き」が一掃されるばかりか、安価(手数料2.9%+処理料¥35/件程度※)で提供されるということ。※・・・日本では未発表のため本国同等と予測。

もはや「ネットでの物販」において決済代行会社なんか必要ないと思えてきます。決して大げさではなく。

インパクトは大きい?

AppleIDの利用者は世界で5億人居ると言われていますが、一方のamazonはID利用者を公開していません。しかし公式に

“日本では2012年の5月時点で月間訪問者が4800万人を超えた”

と発表しています。日本だけでですよ!
仮に1割が購入に至り、その半分がカード登録したとしても、月間で28万人。3年前の数値ですから、累積会員は少なくとも1千万人は居るでしょう。
世界規模、かつアクティブユーザーで見た場合、AppleIDの利用者数を上回る(※)はずです。
※・・・AppleIDは通算で、非アクティブを減算していないと予測。今後も格安スマホ浸透で減る見通し。なお世界人口は約70億2千万人で、14人に1人がAppleIDを継続利用しているとは思いがたい。
以上からインパクトは特大!と断言できます。
それでは、これによって起こる「近未来的な業界変化」を、例によって3か条で解説しましょう。

1. カートASPは、導入を急ぐ

日本ではフューチャーショップが、一番乗りでカートASPへの実装を発表しました。さすが仕事が早い!私たちも見習わなくてはなりませんね。

利便性が売り物のカートASPにとっては、今でこそ「差別化のための早期実装」ではありますが、近年中に「使えて当たり前」になっている事も容易に想像できます。何しろCVR(成約=購入率)が跳ね上がるでしょうから。
そして彼らは、われわれ決済代行会社に多数の新規契約もたらしていますが、その構図も崩れていきそうなものです。

2. 「手間省き」の競争が加速

これは販売者にも利用者にも、大変ありがたい事で「ネットで物が買いたいけれど、文字の入力が面倒で・・・」という方がいなくなる訳です。
この影響は単純にeコマース業界が活性化するのでなくネットで買えるものは、お店で買わないという方が増加し、日本の流通が様変わりする事もあり得ます。Googleが自動車を出したら運転手どころかディーラーもガソリンスタンドも全部ぶっ飛ぶ話と同じ規模の変化、つまり「モノの小売」の存在意義が揺らぐかもしれませんね。

3. 決済手数料の相場が崩れる

最後に私たち、決済代行業者の行く末です。お馴染みの「業界見取り図」をご覧ください。かつて「客と店舗ので空白だった部分」が、私たちの「活躍の場」でした。

一元的な見取り図とは言え、もう息が出来ないほどのレッドオーシャンになりました!もう新規参入には旨味が無いのでは?(苦笑)
元々難しかった決済代行業界の「サービスの差別化」ですが、それが出来ておらず「ただ決済できるだけ」の企業のままでは、主な収入源である決済手数料の値下げを余儀なくされ、淘汰が進みそうです。

まとめ:ネット物販界は大変革が続く

これまでお話した通り、いわゆる「ネット物販界」は今後も大変革が続いていく事でしょう。上手く共存するか、私たちも別のフィールドの模索と確保を続けていく必要があります。
・・・実は気がかりな事もここまで大絶賛してきましたが、実はリスクの匂いも感じています。それは購入履歴をamazonが入手する事です。すると何が起きるでしょう?
顧客の動向が分かれば、精度の高い追跡広告が出せます。つまり「リピートはamazonで!」とでき得るので

小売店が種を蒔き、amazonが刈り取るという図式が成り立ちます。
これはすごい事です。マーケティングが他力本願かつ完全に自動化されているようなものです。まるでゴンベさんとカラスの諺ですね!むしろ手数料を無料にしてもお釣りが来るんじゃないでしょうか。

現状の規約では、それが「できる」と読み取れますが、何かと広告界隈の適正化が急速に進んでいる現在、どうなっていくかが楽しみです。